山形ヤタイ

INDEPENDENT WORK

 

date 

セルフビルド

実施エリア:池袋・横手・盛岡・山形・江差・一関・板橋宿・八幡浜・塩釜・木綿街道・都筑・江津・木更津・町田

用途:什器

構造:木造

時期:2017.03

 

credit

担当:OF THE BOX追沼翼+堀内敦央

協力:合同会社ボタ

 

event

GREEN LOOP SENDAI・nest marche・IKEBUKURO LIVING LOOP・FLESH HOP FEST 2018

 

publishing

 「テンポラリーアーキテクチャー」Open A・公共R不動産 編 /馬場正尊 他著(執筆協力)

プロローグ

郁文堂書店再生プロジェクトを進める中で、私たちは建築の力を過信していたことに気づいた。ひとつの空き家のリノベーションがまちに大きなインパクトを与えると思っていたが、実際にはそうではなかった。そこで、新規事業者と空き物件のマッチングの重要性に目を向けるようになった。商売を行うには確実に売上が見込める立地が必要であるが、シャッターが閉じられた商店街ではそれが難しい。そこで、賃貸借契約を結ぶ前段階で、軒下スペースを利用し、ビジネスポテンシャルを試すためのトライアルを企画した。

 

トライアル軒下ヤタイ

山形市にあるカフェ「BOTAcoffee」の軒下空間を利用し、商売の可能性を探る実験を開始した。カフェ前の約2メートルのセットバックスペースにヤタイを設置し、不動産のように軒下空間を貸し出した。出店者は使用料として2000円/日を支払い、さらに平日は売上の5%、土日・祝日は10%を支払うことを条件に募集した。このトライアルは8カ月にわたって行われ、パン屋、靴磨き、花屋、飲食店など、さまざまな業種が出店した。ヤタイが軒下という何でもない空間に設置されたことで、その場所に新しい価値が生まれたのである。

 

 山形ヤタイの3条件

私たち建築学生でさえ、建材の調達には不慣れであった。そこで、誰でもどこでも作れる什器を目指し、以下の3つの条件を設定した。

 

・入手の簡易性:全国どこでも再現できるように、ホームセンターで入手可能なツーバイ材、針葉樹合板、レジャーシートなどの材料を使用すること。

・製作の簡易性:製作作業は穴あけ、ビス打ち、塗装のみとし、インパクトドライバーさえあれば製作可能な構造にすること。

・モバイル性:軽自動車の助手席を倒して積み込めるサイズにし、車で運べるようにすること。

 

山形ヤタイワークショップ

このヤタイの特長である「場所を選ばない設計」が評価され、全国から依頼を受け、ワークショップを各地で開催することになった。ワークショップでは、DIYでのヤタイ作成に加え、道路使用許可申請や臨時営業許可の手続きといった実務的なレクチャーも行い、自分たちのまちを楽しむためのヒントを提供している。もともとは山形を拠点に始まった小さな活動であったが、2022年8月時点で全国13地域で開催され、各地でヤタイの活用が広がっている。ワークショップをきっかけに新しいヤタイも次々に誕生し、「共有知財としての建築」という新たな都市空間の在り方が、これからの都市に求められるものかもしれない。

 

トライアル軒下ヤタイ
トライアル軒下ヤタイ
山形ヤタイ運営スキーム
運営スキーム